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 [image of a Brave GNU World]
Brave GNU World - 第42号
Copyright © 2002 Georg C. F. Greve <greve@gnu.org>
日本語訳: IIDA Yosiaki <iida@brave-gnu-world.org>
許可声明は以下のとおり

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GeorgのBrave GNU Worldの新しい号へようこそ。 今回、 第42号は、 かなり象徴的です。 大地はほとんど無害かもしれませんが、 迷子になるのは、 往々にして、 たやすいものです。 しかし、 幸運なことにGpsDriveがあります。


訳注: 42は、 「生命と宇宙と万物に関する根限的な問いに対する答え」 と言われています。

GpsDrive

その名前がほのめかすように、 Fritz GanterによるGpsDrive [5] は、 GNU General Public License配下の誘動用Free Softwareシステムです。 これは、 「全地球測位システム」 ("Global Positioning System") の衛星を使います。

GpsDriveは、 GPS受信機をとおして現在位置をとらえ、 自動選択した地図上に、 利用者の選んだ縮尺で表示します。 地図は、 インターネットから直接、 または、 プロクシーを経由して取り込むことができます。 ExpediaやMapblastといった、 地図サーバーからも取り込めます。

GpsDriveは、 通過点による経路立案をサポートします。 通過点はファイルから入力したり、 マウスで直に入力したりできます。 経路は記録して、 後で再生できますので、 通った道を記録して仲間に渡すことができますが、 これはすでに、 たとえば自転車旅行などで使われています。

常に画面を見続けなくてもいいよう、 GpsDriveは、 英語、 ドイツ語、 スペイン語での音声出力をサポートしており、 これは、 Festival [6] という音声合成ソフトウェアによるものです。

GpsDriveの開発は、 2001年8月に始まったばかりで、 まだ1年しかたっていない割に、 その機能一覧にはびっくりです。 珍しい機能のひとつは明らかに、 位置を仲間と共有できる"friendsd"サーバーであり、 これによりほかの人の位置も表示ができます。

GpsDriveはCとGTK+ツールキットで書いてあり、 すでにかなり安定していますが、 いまだに開発中です。 今後の開発の関心事には、 本当の街路案内と、 音声入力もあります。

これは、 シリアル出力のあるGarminのGPS受信機ならどれでも動作します。 また、 これを検査したGNU/Linuxや、 FreeBSDのラップトップでよく使われる、 NMEAプロトコルをサポートするGPS受信機でも動作します。

しかし、 このようなアプリケーションでは、 いうまでもなく特にPDAが、 興味深いプラットホームであり、 CompaqのiPAQやYopyをお持ちの方は、 嬉しいかもしれません。 GpsDriveはそこでもちゃんと使えていますから。

GpsDriveは、 すでに10種の言語用に地域化されていますが、 特に他の言語への翻訳は、 できるだけ多くの人たちがFritzのプロジェクトへ近付きやすくするため、 彼が手助けをさがしている分野です。

GNU SpaceChart

Migual Cocaによる GNU SpaceChart [7] は、 GNU Projectのやや若いパッケージで、 これも方向を維持するための役に立つものですが、 その適用業務は銀河間迂回路の立案です。 実際 (IN fact)、 これは空想科学小説での関心事で、 その「出発点」 ("original locations") のせいで、 MigualはSpaceChartに取り組むことになったのです。

GNU SpaceChartは、 星系地図作成法のプログラムで、 夜空や星座の2次元画像の表示にとどまらず、 星の空中位置を視覚化できます。

利用者は太陽や、 他の星を遠距離からながめたり、 星の種類を表示しつつ、 ふるいにかけながら調節、 限定することができます。 3次元印象の強調用に、 星を線でつないだり、 宇宙の中で回転させたりできます。

Miguelにとって、 これは他のFree Softwareプログラムにくらべたときの、 SpaceChartの大きな特長のひとつです。 なぜならば、 この程度の3次元感が、 他では得られないからです。

SpaceChartで使われているプログラミング言語は、 CとGNOMEのライブラリーで、 GNU General Public Licenseの下で公開されています。 この選択により、 高速で、 たとえば太陽から50光年以下の全恒星を、 その場でスムーズに回転できます。

GNU SpaceChartの他の構成部分には、 Perlのスクリプトで天文年表から自動生成されるデータ・ファイル、 そして、 もっとも活発なβテスターであり、 (Miguelによれば) つきない改良のアイデアを提供してくれているという、 Robert Chassellから大部分を貢献された文献があります。

このプロジェクトの主な対象者は現在、 SF小説の作者、 読者、 恒星の相対的な相互分布に関心のある人たちです。 しかし彼は、 どうすればGNU SpaceChartがより役に立つようになるかを教えてくれる、 「本物」の天文学者からのフィードバックを望んでいます。

コード、 試験、 文献といった形での手助けも、 もちろん大歓迎です。

Process View Browser - その後

Brave GNU Worldの第36号 [8] では、 Rainer Lehrigによる "Process View Browser" (pvbrowser) プロジェクト [9] を紹介しました。 これは、 技術的プロセスの制御を視覚化をするものです。

当時、 このプロジェクトの最も深刻な短所は、 GNU/Linux上ではFree Softwareでありながら、 WindowsやMacintoshでは独占的であった、 という点でした。 これは、 Brave GNU Worldの記事からすれば、 やや閉鎖的な呼び方をした理由でもあります。

しかし、 Rainer LehrigがBrave GNU Worldのコミュニティーに知らせるべく、 連絡してくれたところによると、 今ではすべてのプラットホームで、 GNU General Public Licenseの条件下でのFree Softwareとして、 pvbrowserを入手可能にしたそうです。

また、 ほとんど全部のQtウイジットがサポートされ、 Visualization ToolKit (VTK) [10] がブラウザに同梱された、 とのこと。 ですので、 今や本格的な3Dグラフィックスの作成が可能になったわけです。

ご興味がもしあれば、 記事 [8] やホーム・ページ [9] で詳細をご覧ください。

GNU EPrints

サウサンプトン (Southampton) 大学のChristopher Gutteridgeは、 Mike Jewellとともに、 オンライン文書局 (archive) 作成プロジェクトのGNU EPrints [11] に取り組んでいます。

科学領域では特に、 文献探索は信じられないほど重要な作業であり、 刊行物はそれが見つかるかぎりにおいて役に立つものです。 これを簡単にするのが、 GNU EPrintsの目標です。 理論上これは、 学会、 プロジェクト、 研究分野の文献や記事が保管されるような状況でなら、 実現が可能です。

GNU EPrintsの政治的実力者であるStevan Harnad教授は、 科学からその成果への制限のないアクセスを再構築し、 科学的な交換に参加する機会を経済的に弱い研究所や国へあたえる、 というアイデアから、 プロジェクトの動機を引き出しました。

GNU General Public License (GPL) の下のFree Softwareではありますが、 GNU EPrintsは、 その当初から、 さまざまな言語のサポートとの連動という長所も提供しています。

フィールドごとに言語を選択することも可能な、 さまざまな言語のウェブ・ページを提供することができます。 これはすでに、 英語とフランス語両方の要約の必要なフランス語の文書局、 という実用的な応用例が見つかりました。 しかし、 EPrintsは、 ヨーロッパ言語に制限されているわけではなく、 Unicodeのおかげで、 ほとんどどんな言語も可能です。

EPrintsは、 オブジェクト指向アプローチをとったPerlで、 できるだけわかりやすく書かれています。 これは、 EPrintsが絶対に完全ではありえず、 地域的状況に合わせるための変更がいつか必要になる、 というその設計思想によるものです。 そのためEPrintsでは、 何か役に立つことをするカスタム・スクリプトを呼出す「フック」という概念を、 採用しています。

そのため高度にカスタム化可能なシステムになっていますが、 正しいオプションを見つけたり、 色々な関数を理解したりするのが、 問題を引き起すことも、 往々にして、 あります。 新しい利用者を正しい方向に導く手助けをするため、 ありがちな質問やニーズを扱うためのハウツーが用意されています。

作者の経験からいって、 実世界での採用において実際、 技術面は副次的な問題で、 保管方針 (archive policy) や構造の合意を得ることの方が、 もっと大変なのです。

20種の見出しのある文書局構造の決定に、 複数の委員会が数か月かかるような場所もあります。 社会的な問題が技術では片付かない、 ということを示す例のひとつ、 と言えるでしょう。 こういった場合、 Christopher Gutteridgeは、 「アメとムチ」という、 そこそこのツールを使うようです。

しかし、 いったん構造に合意ができ、 十分な量の高次元データ (訳注: 「『データ』についての『データ』」のこと) を指定できるまでに利用者が慣れてくれば、 GNU EPrintsは、 非常に価値あるツールを提供できます。

Open Archives Initiative (OAI) [12] 標準の1.1版と2.0版を満たしていますので、 文書局の高次元データを他の文書局と共有することさえできます。 ですので、 同時に複数のオンライン文書局で見出しを検索できます。

Christopher Gutteridgeによると、 今のところ手助けは本当にいらないとのことです。 コード・ベースは十分安定しているようですし、 外部からの資金提供のおかげで現在、 良質の文献も整備中です。

Koha

Koha [13] プロジェクトも、 書面上の情報をアクセス可能、 検索可能にすることを扱います。 しかし今度は、 (アナログの) 図書館管理ソフトウェアという形でです。

Kohaの中心部分、 最も明らかなその利用法は、 もちろん、 OPACというカタログ・カードと似たようなインターフェースです。 これは、 さまざまな指定での検索が可能です。 ですが、 新刊本の取得、 回覧、 図書館の会員情報も、 Kohaで管理できます。

拡張機能の中には、 会員用の書評一覧 (reading-lists) があり、 これは、 あなたが去年読んだ興味深い本を見つけることができるもので、 Horowhenua Librariesではとても人気のある機能ですが、 もしそういった情報が他者に公開されるのが問題 (critical) だと思われる場合は、 そういったデータの収集を止めることができます。

新刊取得の管理では、 予算や、 交換率の計算を含むさまざまな業者の価格情報の管理ができます。 これにより、 注文したり返却されたりした本の完全な制御が常にできるわけです。

Kohaはインターネットから切れているわけではありません。 加入用のウェブ・サイトもあります。

2000年1月から使われているKohaは、 今や、 中小規模図書館用で最も充実した、 最も活発で、 きちんとサポートされたFree Softwareによる解法で、 (国立図書館級の) 大規模図書館への拡大移行もほぼ完了しています。

Perlで書かれたこのプロジェクトのとても興味深い部分は、 その歴史にあります。 これは当初、 ニュージーランドのHorowhenua Library Trustのために、 Katipo Communications Ltd.という会社が、 契約作業として書いたものです。

使用中のシステムがもうじき使えなくなるのではないか、 と予期されていた1999年の請求に反応し、 Katipoは、 Internet、 GNU/Linux、 MySQL、 Perl、 HTTP、 telnetを基本概念として提示しました。

その図書館では、 2000年1月3日に新システムに移行する予定でしたので、 当面の課題は、 16週間以内に古いハードウェアに新しいソフトウェアを書いて、 インストールする、 ということでした。

よくあるように、 一番困難な問題は、 図書館員はプログラミングについてはよく知りませんから、 開発者には未知であるような図書館内部の作業の知識を (プログラムに) 書き起すことにありました。

当面の問題を解決するため、 開発者と図書館員のチームが作られ、 16週間にわたり、 かなり緊密な作業をすすめました。 このチーム精神は、 プロジェクトの終わった後も続き、 今日にいたるまで、 Kohaの保守開発が異分野相互チームによってすすめられています。 これはきっと、 このプロジェクトが成功した理由のひとつでしょう。

別な理由は、 GNU General Public Licenseの下のFree Softwareとして公開されたことです。 Katipo Communications Ltd.がこれを提示したとき、 これがなぜいい考えであるかを説明するのは困難でしたが、 最終的にはHorowhenua Library Trustを説得できました。

議論のひとつには、 Horowhenua Library Trustも、 Katipo Communications Ltd.も、 大きな規模への配布やマーケティング能力がないか、 または、 前向きではないことでした。 しかし、 より重要なことは、 Katipo Communicationsにとっての潜在的問題にたいして、 プロジェクトを安全確実にすることにありました。 Free Softwareのため、 これは安全な投資になりました。

図書館側には、 ここでなされた作業が他の図書館にたいしても利益となる、 という展望があったため、 当時そのプロジェクトは、 マオリ語で贈り物を意味する、 Kohaと呼ばれることになりました。

その報いとして、 プロジェクトは、 その周りに形づくられたとても活発なコミュニティーにより維持されるという、 すべての期待を上回るものとなりました。

ここから学ぶべき、 容易に認識可能な教訓が2つあります。 第1に、 異業種のチームは調整が困難ですが、 もしその合併が成功したならば、 結果はだれにとっても満足いくものになるだろう、 という点です。

第2に、 ソフトウェア開発に金を払う人や会社は、 その独自の利害関係の中で、 それをFree Softwareとしてリリースすることを考慮すべきである、 という点です。 これは投資や独立性を安全確実にするだけでなく、 独占的なプロジェクトではなしえない国際的協力、 という付加価値を産み出します。

ところで、 Kohaは当初、 民主的に組織されていましたが、 Brave GNU Worldのアンケートに答えてくれたPat Eylerが最近、 Kaitiaki (プロジェクト・リーダー) に選ばれ、 Chris Cormackを1.2系のリリース・マネージャに、 Paul Poulainを1.4版全体の責任者としました。

将来の開発にむけ、 Kohaチームは、 Perl開発者、 ウェブ設計者、 文献執筆者といったより多くのメンバーをさがしていますが、 どれもみな理想的には図書館経験の知識を必要としています。

図書館にとっての利益は別にしても、 図書館の利用をより快適にするはずですから、 図書館をよく訪れる人や、 図書館に関係のある人は、 Kohaのことを気にとめておくことを、 私としてはお勧めするばかりです。

図書館におけるFree Softwareのさらなる情報は、 オンライン [14] でみつかります。

GCron

GCron [15] は、 GNU System内で現在使われているVixie Cronの代替です。 というのも、 Vixie Cronは90年代の初期からすでに保守されておらず、 さまざまなGNU/Linuxの配布物件がそれぞれ内部パッチでしのいでいるような、 安全上の問題も、 複数見つかっているからです。 gcronのおかげで、 もうじきその必要はなくなるでしょう。

cronは明らかにUnixシステムの「古典」のひとつですが、 読者の中には聞いたことのない方もおいででしょうから、 簡単なご紹介が役に立つでしょう。

Cronとは、 プログラムやスクリプトを指定の時刻 (曜日、 時分、 月日など) に実行できるようにするプログラムです。 これにより、 たとえば周期的に必要な仕事などを、 自動化できます。 Cronは、 Unix風システムのほとんどすべてで、 システム管理の仕事に使われています。

Ryan Goldbeckは、 安全性に配慮した新実装であるgcronに取り組んでおり、 それはGNU/Linuxの配布物件で使われることになるでしょう。

最初の目標は、 POSIX標準のサポートを完了することと、 移行が苦痛にならぬよう、 Vixie Cronのファイルとの後方互換性をもたせることです。

最終的には、 GNU/Hurd専用の拡張や、 起動時刻や使用資源といった実行プログラムのくわしい情報の追加などが、 予定されています。 実行されるプログラムによる使用システム資源の制御方法も含まれることでしょう。

gcronがGNU General Public Licenseの下のFree Softwareとして公開されていることは、 別に驚くに値しないでしょう。 プログラミング言語にはCが使われています。

Goodbye, and thanks for all the fish!

一部の人たちのような物理学者とコンピュータ科学者の思考世界をつくりあげ、 若くして1年少し前に亡くなった「ダグラス・アダムスに捧げる」号は、 これでおしまいです。

そしていつものように、 お考え、 コメント、 ご質問、 発想、 ご意見、 興味深いプロジェクトの情報は、 恥ずかしがらずにいつものアドレス [1] へ。

情報
[1] 意見、 批判や質問は Brave GNU World <column@brave-gnu-world.org> まで
[2] GNUプロジェクトのホーム・ページ http://www.gnu.org/home.ja.html
[3] GeorgのBrave GNU Worldのホーム・ページ http://brave-gnu-world.org
[4] 「We run GNU」イニシアチブ http://www.gnu.org/brave-gnu-world/rungnu/rungnu.ja.html
[5] GpsDrive home page http://gpsdrive.kraftvoll.at
[6] Festival home page http://www.cstr.ed.ac.uk/projects/festival/
[7] GNU SpaceChart home page http://www.gnu.org/software/spacechart/
[8] Brave GNU World issue 36 http://brave-gnu-world.org/issue-36.ja.html
[9] Process View Browser home page http://pvbrowser.sourceforge.net
[10] Visualization ToolKit (VTK) home page http://public.kitware.com/VTK/
[11] GNU EPrints home page http://www.eprints.org/
[12] Open Archives Initiative (OAI) home page http://www.openarchives.org
[13] Koha home page http://www.koha.org
[14] Free Software for libraries http://www.oss4lib.org
[15] GCron home page http://www.gnu.org/software/gcron/

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Copyright (C) 2002 Georg C. F. Greve
Japanese translation by IIDA Yosiaki

日本語訳: 飯田義朗

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(著作権と上の許可告知のある限り、 この写しの逐語的な複製をとって、 配布する許可を認めます。)

Last modified: Sat Jun 1 16:31:14 CEST 2002