Tux Paint
説明
Tux Paint は、とくに子供向けに作られたクロスプラットフォームの図形描画プログラムです。3才の小さな子供でも、子供が認識しやすいラベル付けされた大きなボタンやアイコンを特色とする明解で直感的なインターフェースを問題なく使うことができます。画面の真ん中にいろんなツールやペイントブラシを使って子供が絵をかく白いキャンバスがあります。手始めとして、塗り絵の本と同様な色を塗るための輪郭だけの絵を読み込むことができます。
このプログラムには、フリーハンドの描画や色塗りをするための線やブラシ、幾何学図形、サイズ変更、消しゴム、「繰り返し」や「取り消し」オプションといったもっとも一般的な描画ツールに加えて、お絵描き中に流れる音や、虹、きらめき、チョーク、ぼやかし、反転などの「Magic」と呼ばれる印象効果をだすための専用ツールも含まれています。
Magicツールに加えて、子供たちに人気の機能として「スタンプ」があります。これは、植物や花や動物、日曜大工、惑星などの写真やクリップアートを読み込んで、キャンバスへ「スタンプ」できる機能です。たくさんのスタンプは自由にプログラムへ追加でき、追加されたスタンプを他の人が別コレクションとしてインストールし利用することができます。多くのユーザが自身の作品をプログラムのスタンプとして含まれるべく提供しています; ここでは、インドのある学校で子供たちのグループがどのようにしてスタンプの追加を行ったかの例を見てみましょう。
Tux Paint は80以上の言語で利用可能です。これには、少数派や右から左へ読む言語も含まれています。こうしたたくさんの言語は世界中のユーザによる貢献のおかげです。
詳細: FSF ディレクトリ、Tux Paint 公式ウェブサイト
誰がどのように使っているか
Tux Paintを使用しているホームユーザのコメントや学校からの報告が、公式ウェブサイトで紹介されています。それによると、このプログラムは、子供たちが基本的なコンピュータグラフィックのスキルを身につけるのにもっとも役立つツールの一つであるばかりでなく、子供たちにとても魅力的な環境を提供してくれているのだ、という報告がなされています。しかしながら、同様のお絵描きソフトウェアに比べてTux Paintが子供たちに好まれる際立った特徴は、それが自由ソフトウェアであるという事実によるものです。これは、いかなる類の制約も受けないこと、またユーザが一連の自由を与えられていることを意味しています。たとえば、そうした自由の一例として、ユーザが必要な台数分のワークステーションへプログラムをインストールしてもよいことが挙げられます。これは学校にとっては特に重要な自由なのです。
自由ソフトウェアが与えてくれるもう一つの重要な自由とは、ユーザの目的に応じてプログラムを修正したり、修正版を再配布してよい自由です。この自由が与えられるおかげで、Tux Paint は少数グループにしか使われない言語をはじめ、非常に多くの言語で使用することができています。実際に、あまり広域で使われない言語への翻訳がユーザ自身によって行われました。たいていの場合、不自由なソフトウェアを開発するビジネスを生業とする企業はマーケット規模に応じてポリシーを変えるものです: マーケットが利益を生むほど大きなものでない場合、企業は一般的にそうしたマーケットに投資をしたくないものなのです。
Tux Paintでどのようにソフトウェアの自由が実践されたかを示す良い例は、インド、ケーララ州のVHSS Irimpanamという学校で11〜12才の生徒たちによって行われた作品にみることができます。その作品は、生徒たちが自分たちで撮影した写真をもとに、プログラムへ一連のスタンプを追加することによって行われました。生徒たちが現地の花を写真に撮り、自由なGNU Image Manipulation Program、GIMP によってディジタル画像を処理し、さらに、英語と現地の言葉であるマラヤーラム語の両方でそれぞれの花の名前を追加しました。Tux Paintには音声機能もあり、生徒たちはさらにマラヤーラム語で花の名前の発音を自分たちの音声で録音しました。これにより、花の一つを選んでキャンバスにスタンプとして配置しようとする時に、ユーザはマラヤーラム語でその花の名前をテキストとして読んだり、音声として聴くとができるようになっています。ビデオをご覧ください。また、SubRipの字幕をご覧ください。
この学校でプログラムを修正する自由を行使して追加された有意義な成果としては、ケーララ州で使われているマラヤーラム語にTux Paintのインターフェイスを翻訳したことがあげられます。
なぜ
プログラムを修正する自由は重要な方策であり、学校で行使されることによって、単に基本的なコンピュータグラフィックのスキルを教えたり、子供を楽しませるといった範疇を越えることができました。情報技術が、課題の対象となったりユーザに課せられたりするようなものではなく、要件に応じてユーザを支援する道具なのだということを子供たちに教えることができました。
研究室のすべてのコンピュータへプログラムをインストールできる自由はまた大事なことでした。なぜなら、学校はライセンスに投資する経済的資源に限りがあるからです。生徒へプログラムの原版や修正版の複製を配布することで、学校による経済的苦難をかかえた家庭への支援が行えたのです。
結果
Tux Paintへスタンプを追加することは、生徒たちには刺激的で充実した経験でした。第一に、生徒たちは、プログラムの動作の仕方を分析し、プログラムがどのようにスタンプの実装をしているかのメカニズムを見出すことができました。次に、プログラムのこの特質によってスタンプの追加がどのようにして許可されるのかや追加する方法を学びました。また、生徒たちは画像の生成にあたって、GIMPについてさらに詳しい知識を得たのです。こうした一連の過程によって新しい技術的な機能を開発する機会だけでなく、地域の植物を識別し鑑賞する機会ももつことができました。いちばん重要だったのは、ソフトウェアの自由が与えられた場合に、開発者でない人や子供といた誰もが情報技術に影響を与えたり、改善することが現実にできるのだということを学んだことでした。
謝辞
Appooppan Thaady や Anthoorium の現地の花のマラヤーラム語のTux Paint画面や音声ファイルは、Vocational Higher Secondary School Irimpanam の好意で提供され、CC-BY-SA、 Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 Unportedの条件で許諾されています。